2024.02.07

活動を知る

日常の中でアートを楽しむ「六条山プライベート美術館」

はじまり

プライベート美術館は、障害のある人の作品を、その地域の人たちの生活空間や商店などといったプライベートな空間で楽しむアートプロジェクトです。2005年に近畿労働金庫とたんぽぽの家がすすめる地域アートプロジェクト「ひと・アート・まち」の企画として始まりました。現在も、奈良県の主催で近鉄奈良駅周辺や県内各地で実施されています。  

六条山プライベート美術館は、「プライベート美術館」の取り組みに刺激を受け、六条地域でたんぽぽの家メンバーの作品を展示する機会を作りたいという思いで、2019年にスタートしました。企画の運営にあたっては、普段の仕事でアートに触れる機会の少ない生活支援の現場ではたらくスタッフ、はたらきはじめてまもないスタッフが関わっています。


六条山プライベート美術館の流れ

1.自宅展示

地域に広げる前に、自宅に飾ってみてアート作品とともに送る日常を体験します。

その体験がアートを暮らしのなかに取り入れる意味をあらためて考える時間に。

2.招待状の送付

スーパーや居酒屋、病院や学校など、六条地域の暮らしを支えるさまざまな場所や個人のお宅などに、展示する作品を選んでいただく「お見合い展示」の招待状をつくり、お届けします。

スタッフとメンバー手作りの招待状

3.お見合い展示

アートセンターHANAにある収蔵庫から100以上の作品を選びギャラリーに展示します。どんな気持ちで選んでみたか、コンセプトや感じたことを自由に文字に起こしてみる経験もします。普段はケアがメインのスタッフも、六プラの時には作品のレイアウトを考え、飾る作業も。当日を迎え、本展会場の皆さんに自分の選んだ作品が選ばれていく時には、まるで仲人のような気分になります。

こちらは、搬入の様子。経験問わず、新人スタッフも自分で選んだ作品をどう並べるかを考えて展示します。

お見合い展示がはじまると、参加者のみなさんが自宅や仕事場に飾るすきな作品を選びにきてくださいます。

4.本展

まずは搬入作業。作品を車に運び込み、出展作家さんと一緒に会場となるお店や病院、学校などにへお持ちします。本展期間中はいつもの地域が会場に様変わり。会場ごとに工夫される展示場所や方法に滲み出る「その人の暮らし」に触れることも。本展を終えると、作品をお迎えに行き、搬出作業を行います。搬出された作品は、収蔵庫に戻ったり新しい展示場所に運ばれて行ったり。またそれぞれに歴史を積み重ねていきます。

5.お礼状の送付

参加していただいた地域の皆さまに、お礼のお手紙をつくり、送ります。中には「また来年も」と声をかけていただくことも。お届けが完了し、六プラはひと段落です。

 

(メイン画像、本展画像:衣笠名津美)


六プラの醍醐味とは?

東 知彩貴

(勤続6年目/たんぽぽ生活支援センタ―・福祉ホーム有縁のすみか 兼務)

六プラは、わたしが入職して2年目に始まりました。当初は招待状、フライヤー、お礼状を作成していたのですがどれもこれも経験がなく、てんやわんやしながら作成したのを覚えています。たんぽぽは、アートを扱う法人なのでそういう経験が豊富な先輩もおり、相談をしながら進めることができ、安心感はありました。
 六プラは今年で5回目になりますが、毎年変わらず参加しています。「この取り組みが楽しいから」というのがいちばんの理由です。普段ケアをしているメンバーさんの描いた作品は、やはり他の作家さんの作品よりも一層魅力を感じます。その魅力的な作品を、メンバーさんが暮らし働くこの地域の人とともに愛でることができるのはありがたいことだと感じています。
 招待状づくりや搬入作業などの中で、いつも関わるメンバーさんと、いつもと違う関わり方をすることは関係性を広げたり少しずつ変化をもたらしたりすることもあり、面白いです。そういう意味で、一年に一度普段の仕事とは異なる経験をできることは視野を広げ、普段のケアに新しい視点を入れることにつながっているのではないかと思います。

渡辺志歩子

(勤続3年目/生活支援センタ―・福祉ホームコットンハウス 兼務)
たんぽぽの家に入職した当初から、六プラの取り組みに関わっています。1年目のときは、新人スタッフとして自宅展示とお見合い展示の作品選定をしました。私は支援センターと福祉ホームで働いており、メンバーさんの仕事の部分を見る機会があまりありませんでした。入職して日が浅いとどうしてもその時点のメンバーさんの様子しか分からないのですが、作品を選ぶ中でその方たちの何年にもわたる活動の歴史が見えてきました。2年目以降もフライヤーを担当したり、搬入作業で地域の病院やお店にお邪魔したりしています。 六プラの取り組みはメンバーさんにとっても地域と繋がりを感じるきっかけになっていると思います。六プラの会期中、作品が展示されているお店に作家であるメンバーさんとご一緒することがありました。普段は施設の中で関わることの多いメンバーさんが楽しそうにされている姿が印象的でした。お店に作品が展示されることでメンバーさんとそこへ行く機会ができ、六プラで新しい繋がりができるのを感じました。メンバーさんとのコミュニケーションのきっかけができたのも良かったです。 六プラはたんぽぽの歴史の中では新しい取り組みだと思うのですが、これからも六条地域の中で長く続いてゆくと良いなと思います。

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